大阪高等裁判所 昭和24年(を)1071号 判決 1949年6月10日
被告人
道本進
外二名
主文
本件控訴はいづれもこれを棄却する。
理由
被告人鉄羽哲夫弁護人中島寬控訴趣意や二点について、しかし、いやしくも公務所または、公務員の作成名義を詐り一般人をして公務所又は公務員の作成した文書なりと信じさせるに足る形式外観を具備する以上、僞造公文書なりと認むべきところ原判決の認定した僞造文書は挙示の証拠によれば(一)、大阪地方專賣局煙草部の記名捺印ある堺專賣出張所長宛昭和二十三年八月二十日附煙草廻送指令(証第一号)(二)右所長宛西宮專賣出張所長名義及び捺印ある同月二十四日附ピース百四十万本の仮領收書(証第二号)(三)西宮專賣出張所分任会計官吏大藏事務官藤田秀恭名義の署名捺印ある堺專賣出張所分任物品会計官吏宛の同日附ピース百四十万本の領收書(証第三号)であり、以上は形式外観において一見右各成名儀者作成に係ることを信じさせるに十分であるから、原審がこれを僞造公文書と認定したのは正当であつて煙草融通手続には普通証第二号のような仮領收書は発行されていなくても、また実際上煙草融通命令は大阪地方專賣局長名儀でだされ、かつ文書用紙が相違していようとも、あるいは使用順序等がちがつているやうな事実があつたとしても僞造公文書なるに妨げはないものと解するのが相当であり、從つてこれを眞正のもののように裝い原判示のごとく送付または呈示した以上、行使したというに十分である。また詐欺罪の目的物の判示は賍物たることがわかる程度に記載すれば足るのであつて、正確な價額のごときはかならずしも明らかにすることを要しないから原判決がピース百四十万本の交付を受けて騙取したと判示した以上財物の判示として欠くるところはないのであり、かりに所論のごとく良質のものでなくそのまゝでは、專賣局としての市販不適品であるとしても挙示の証拠によつても全然無價値とは解されず、畢竟原判決には所論のような違法の点はない。
以下省略